水辺に残る鉄と赤レンガの記憶。北区・王子〜赤羽、土木遺産を歩く大人の社会科見学

旅の始まりは「赤い水門」

明治から大正にかけて築かれた、荒川の治水を支えてきた巨大な水門。
朱色の鉄骨は、都市が水と向き合ってきた歴史そのものだ。
川辺に立つと、構造物の重みと静けさが同時に伝わってくる。

旅の始まりは、荒川の河川敷に忽然と現れる巨大な構造物から。
通称「赤水門」と呼ばれる 旧岩淵水門 です。

治水の歴史を刻む、重厚な赤。

大正13年に完成したこの水門は、かつて荒川の氾濫から東京の下町を守るために造られました。
現在は役目を隣の新水門に譲り、**「使われなくなった構造物」ではなく、「残された記憶」**として静かに立っています。

近くで見上げると、むき出しの鉄骨と無数のリベットが連なり、装飾ではない機能だけで形づくられた姿であることがよく分かります。
それでも、荒川の流れを背景にした赤レンガは、不思議と冷たさよりも誇りのようなものを感じさせます。

川の音を聞きながら、
「これを、当時の人はどうやって造ったんだろう」
そんな会話を交わす時間こそが、この場所のいちばんの贅沢かもしれません。

※旧岩淵水門(赤水門)の来歴や保存については、
北区公式サイトの解説も参考になります。

都電荒川線で辿る「東京さくらトラム」の旅

赤羽の風を感じた後は、少し足を伸ばして王子へ。ここでの移動は、やはり「都電」が主役です。

王子駅周辺を彩る、チンチン電車の懐かしい響き。

「東京さくらトラム」の愛称で親しまれる都電荒川線。王子駅前付近では、路面電車が一般車と一緒に道路を走る「併用軌道」が見られます。ガタンゴトンと鳴り響く振動と、発車時の「チンチン」という鐘の音。この音を聴くだけで、子供の頃に手を引かれて歩いた記憶が呼び起こされるようです。

飛鳥山公園の急勾配をゆっくりと登っていく車窓からは、四季折々の花々や、かつて「紙の街」として栄えた王子の街並みが流れていきます。急ぐ必要のない旅だからこそ、この「ゆっくり」とした速度が心地よく感じられます。

*都電荒川線(東京さくらトラム)の路線概要については、
東京都交通局の公式案内を参照してください。

【商店街巡り】個性豊かな二つの街を歩き比べる

散策の醍醐味は、その土地の「呼吸」を感じる商店街にあります。王子と赤羽、対照的な二つの商店街を歩いてみましょう。

【王子】昭和の面影。看板建築が残る落ち着いた駅前商店街。

王子駅を出てすぐの商店街には、昭和初期から続く「看板建築(建物の前面を装飾した建築様式)」の店舗が今も現役で残っています。どこか品があり、落ち着いた空気が流れるこの街は、夫婦で静かに品定めをしながら歩くのにぴったりです。

活気と迷宮。赤羽一番街で感じる人間臭いぬくもり。

一転して赤羽一番街は、エネルギーに満ち溢れています。昼間から提灯が灯り、威勢のいい声が響くこの場所は、まさに「東京の生きた風景」そのもの。細い路地に入れば、迷路のようなワクワク感が童心をくすぐります。

この街で味わうもの

たくさん歩いた後は、この土地ならではの「歴史の味」を堪能しましょう。

【王子】明治から続く贅沢な甘み。専門店の「玉子焼き」。

王子といえば、落語「王子の狐」にも登場する名物の玉子焼き。扇屋や鳥勝といった老舗が守り続けるその味は、ふっくらとしていて出汁の香りが口いっぱいに広がります。夕飯のお土産に選ぶのも、この旅の素敵な締めくくりになります。

【赤羽】大人の粋な昼食。手打ち蕎麦と地酒で一服。

赤羽での昼食は、賑わいを少し離れた静かな蕎麦屋がおすすめです。職人が丁寧に打った蕎麦を、少しの地酒と共に手繰る。そんな「粋」な時間が、大人の休日にはよく似合います。

【知の体験】学びと癒やしが共存する寄り道スポット

最後は、この旅のテーマである「大人の社会科見学」を深める体験です。

【王子】近代産業の夜明け。飛鳥山博物館で歴史を紐解く。

王子は、渋沢栄一が日本初の洋紙製造工場を設立した地。飛鳥山博物館では、当時の工場の模型や資料を通じて、日本の近代化を支えた人々の情熱を知ることができます。「今の私たちの暮らしは、ここから始まったんだね」という発見が、旅をより深いものにしてくれます。

【赤羽】旅の締めくくりは銭湯。富士山の壁画を仰ぎ見る。

歩き疲れた足を癒やすのは、やはり銭湯です。北区には昔ながらの煙突が残る銭湯が点在しています。高い天井と、見事な富士山のペンキ絵。湯船に浸かりながら旅の思い出を振り返る時間は、心身を芯から解きほぐしてくれます。

【アクセス】
・旧岩淵水門(赤水門):東京メトロ南北線「赤羽岩淵駅」より徒歩約5分
・王子方面:JR京浜東北線/東京メトロ南北線「王子駅」
・赤羽方面:JR各線「赤羽駅」

※水門周辺は日差しを遮る場所が少ないため、
夏場は帽子や飲み物があると安心です。

まとめ:北区・王子〜赤羽。水辺と歴史が織りなす「通な東京散歩」

王子から赤羽へと続くこの道は、ただの移動距離ではなく、大正から昭和、そして令和へと続く「時間の層」を歩く旅です。鉄骨の冷たさと人情の温かさ、都電の懐かしい響き。そのすべてが、日常に新しい色を添えてくれます。

週末、大切なパートナーと共に、知的好奇心を満たす「大人の社会科見学」へ。北区の街は、今日も静かに、その深い歴史を語り継いでいます。

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